イギリス エリザベス女王死去 96歳


NHKニュースよりの転載です

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 イギリス エリザベス女王死去 96歳                2022年9月9日 7時39分

イギリスの君主として歴代最長となる70年にわたって在位してきたエリザベス女王が、8日、96歳で亡くなりました。女王の死去を受け、長男のチャールズ皇太子が国王に即位しました。
イギリス王室は、エリザベス女王が8日、静養先の北部スコットランドのバルモラル城で死去したと発表しました。エリザベス女王は、1926年4月、のちの国王、ジョージ6世の長女として生まれ、1952年、国王の死去に伴って、エリザベス2世として25歳で、王位を継承しました。
2015年には、19世紀のビクトリア女王を抜いてイギリスの君主として在位最長を更新し、ことし6月には、在位70年を記念する祝賀行事「プラチナ・ジュビリー」が盛大に行われるなど、イギリスの統合を象徴する存在として敬愛されてきました。
エリザベス女王は、ソーシャルメディアを活用して、国民とコミュニケーションを積極的にはかる姿勢を打ち出し「開かれた王室」を実践しました。
新型コロナウイルスの感染が拡大し、社会に不安が広がった際には、テレビ演説で連帯を呼びかけるなど、国民に寄り添ってきました。
日本の皇室との関係も深く、1971年には昭和天皇がイギリスを訪問され、1975年には、エリザベス女王が日本を公式に訪問しています。
天皇陛下も3回にわたってイギリスを公式訪問するなど、交流を深められてきました。
エリザベス女王は去年4月、長年連れ添った夫のフィリップ殿下を亡くし、その後、公務に復帰しましたが、ことし6月の「プラチナ・ジュビリー」では体調を考慮して礼拝を欠席するなど限られた機会しか姿を見せず、イギリス国内では健康を気遣う声が上がっていました。
また、9月6日には、与党・保守党の新しい党首に就任したトラス氏をバルモラル城に迎え、首相に任命しましたが、公共放送BBCによりますと、ロンドンのバッキンガム宮殿以外で首相を任命するのは70年の在位期間中で初めてで、女王の健康状態に配慮したものと見られていました。
イギリス王室によりますと女王は8日朝の診察のあと、健康が懸念される状態だとして、医師団の監督のもとに置かれていましたが、現地時間の8日午後、安らかに亡くなったということです。96歳でした。
エリザベス女王の死去を受け、王位継承順位が1位だった長男のチャールズ皇太子が国王に即位しました。
新たに即位したチャールズ国王「最大の悲しみのとき」
イギリス王室は8日、新たに即位したチャールズ国王の声明を発表しました。この中でチャールズ国王は「私の最愛の母、女王の死去は私と家族全員にとって最大の悲しみのときだ。私たちは大切な君主、そして愛すべき母の死去を深く悼んでいる。女王の死は国全体、イギリス連邦、そして世界中の数え切れないほどの人たちに深い悲しみを持って受け止められている」としています。
そのうえで「私と家族は女王が広く敬愛されていたことを知ることで慰められ支えられる」と述べています。
王室ウェブサイト 背景が黒に
イギリス王室のウェブサイトは、トップ画面の背景が黒くなり、中心にはエリザベス女王の肖像が掲載されていて、ほかの内容は閲覧できないようになっています。
トップ画面には「きょう午後、女王がバルモラル城で安らかに息を引き取りました。国王と王妃は今夜はバルモラル城に残り、あすロンドンに戻る予定です」と記し、チャールズ国王とカミラ王妃は、9日にロンドンに戻ることを明らかにしています。
イギリス トラス首相「並外れた生涯の奉仕をたたえたい」
イギリスのトラス首相はエリザベス女王の死去を受けて首相官邸前で声明を読み上げました。
冒頭、トラス首相は「われわれは打ちひしがれている。イギリス国内や世界中にとって大きなショックだ。女王は現代のイギリスの礎であり、そのもとでわが国は繁栄と成長をしてきた。今のすばらしいイギリスがあるのは女王のおかげだ」と述べました。
そして「エリザベス女王はわれわれに必要な安定と強さをもたらした。まさにイギリスの精神そのものでその精神は永遠に続く。イギリスと世界中で愛され、私個人、そして多くの国民の励みだった。その公務に対する献身はわれわれの模範だった」としています。
その上で、トラス首相は「エリザベス女王は生涯で100か国以上を訪れ、難しい時代の中にあって多くの人々と触れあってきた。イギリスとイギリス連邦、そして世界中の友人とともに並外れた生涯の奉仕をたたえたい」と述べその死を悼みました。
イギリス 首相経験者が相次いで哀悼の意
イギリスの首相経験者も相次いで哀悼の意を表明しています。
このうち9月に辞任したジョンソン前首相は、ツイッターに声明を発表しました。
ジョンソン前首相は「私たちの国にとって最も悲しい日だ。1人1人の心の中には私たちが思っていた以上に女王死去の痛みや喪失感がある」としています。
そして、「女王は多くの場で笑顔とぬくもり、そしてユーモアという魔法を70年というたぐいまれなる間、国中に広げてきた」と述べ、長年の活躍をたたえました。
また、メイ元首相もツイッターに声明を投稿し「イギリスとイギリス連邦全体で、女王の死去を嘆いている。首相として女王に仕えることができたのは私の人生の名誉だ」と述べて追悼しました。
各国メディア 一斉に速報
イギリスの公共放送BBCは、エリザベス女王のこれまでの軌跡を写真や動画を交えて伝えるなど、通常の放送から切り替えて情報を伝え続けています。
また、ロンドン郊外のウィンザー城の上に虹が出ている様子も中継で伝えていました。
世界各国のメディアも、一斉に女王の死を速報で伝えています。
国連 グテーレス事務総長「深く悲しんでいる」
国連のグテーレス事務総長はツイッターに「そのリーダーシップと献身から世界中から尊敬されていたエリザベス女王の逝去に深く悲しんでいる。彼女は国連のよき友であり、この数十年の変化の中、人々を元気づける存在だった。彼女の確固たる、生涯にわたる献身は長く人々の記憶に残るだろう」と投稿しました。
国連安保理で黙とう
国連の安全保障理事会では8日、会合の冒頭、今月の議長を務めるフランスのドリビエール国連大使の呼びかけで、出席した各国の国連大使ら全員が立ち上がり、およそ1分間、黙とうをささげました。
バッキンガム宮殿 多くの人が訪れ花束を手向ける
バッキンガム宮殿の前では、雨が降りしきる中にも関わらず、多くの人が途絶えることなく訪れ、じっと宮殿の方を見つめたり、宮殿の門の前に花束を手向けたりしていました。
60代のイギリス人女性は「歴史の変わる瞬間を見届けようと来ました。本当に国に尽くした人でした。外国にルーツのある人もここには集まっています。イギリスは彼女のおかげで多文化の国となりました」と話していました。
60代のイギリス人男性は「新型コロナの間も女王は国をひとつにし、新たな首相を見届けて亡くなりました。本当に長生きでした」と目に涙を浮かべて話していました。
20代のイギリス人女性は「とても悲しいです。彼女は皆のお手本でした。世界中がこの瞬間を見ていると思います。とても歴史的な瞬間です」と話していました。
花を手向けた30代のイギリス人男性は「彼女は象徴的な存在で、その影響力は国中に広がっていました。彼女の言葉やふるまいが私は好きでした。素晴らしい指導者でした」と話していました。
市民「受け入れがたい事実」
パリからロンドンに向かう高速鉄道ユーロスター」の車内では、乗客が携帯電話でニュースを確認したり、女王の訃報について話し合ったりする様子が見られました。
60代のイギリス人の男性は、「たったいまニュースを知ったばかりで予期していたとはいえ、ショックです。イギリス人にとっては受け入れがたい事実ですが、首相も新しくなり、きっと1つにまとまると思います」と話していました。
また、イギリスを観光で訪れていた50代のアメリカ人の女性は、「エリザベス女王はとても長い間女王でしたし、アメリカでも誰からも愛されていました。とてもショックです」と話していました。
各国首脳が追悼
インド モディ首相「温かさと優しさを忘れることはない」
エリザベス女王の死去を受けて、インドのモディ首相はツイッターに「エリザベス女王の温かさと優しさを忘れることはありません」と投稿しました。
この中で、モディ首相は、女王と一緒に写った2枚の写真も投稿し、インド独立の父とされるマハトマ・ガンジーが女王の結婚の際に贈ったというハンカチを女王から見せてもらったというエピソードも紹介しています。
ウクライナ ゼレンスキー大統領「心から哀悼の意」
ウクライナのゼレンスキー大統領は、「エリザベス女王の逝去の報に接し、深い悲しみの中にあります。ウクライナ国民を代表してイギリス王室とイギリス国民、そしてイギリス連邦の加盟国の皆さまに心から哀悼の意を示します」とツイッターに投稿しました。
カナダ トルドー首相「いなくなるのはさみしい」
イギリス連邦の加盟国であるカナダのトルドー首相は8日、エリザベス女王の死去を受けてビデオで声明を発表しました。
この中で「カナダの歴史のほぼ半分となる70年間、女王としてカナダ国民に対し深く、変わらぬ愛情を注ぎ、強さと知恵をもって私たちのために力を尽くしてくれた」と述べ、感謝の気持ちを示しました。
そして「女王は思慮深く、賢く、好奇心旺盛で、親切で、おもしろく、そしてそれ以上のものを持っていた。複雑な世界において、女王の安定した優雅さと決意はわれわれに癒やしと強さを与えてくれた。世界で最も好きな人のひとりでいなくなるのはさみしい」と哀悼の意を示しました。
フランス マクロン大統領「心優しい女王」
フランスのマクロン大統領は、ツイッターに「エリザベス女王は70年にわたって、イギリス国家の継続性と団結を体現してきた。フランスの友人として、また、彼女の国とその時代に忘れられない印象を残した心優しい女王として私は記憶している」と投稿しました。
アメリカ バイデン大統領「比類なき威厳と不変の存在」
アメリカのバイデン大統領は声明を発表し「エリザベス女王は君主であっただけでなく1つの時代を定義した。絶え間なく変化する世界において、何世代にもわたってイギリスの人々を安定させ、誇りを与える存在だった」としています。
そして「比類なき威厳と不変の存在でイギリスとアメリカの同盟関係をより深いものにした。両国の関係を特別なものにすることにも寄与した」とした上で「アメリカ中の人々の思いと祈りは、悲しみにくれるイギリスおよびイギリス連邦の人々とともにある。彼女のレガシーはイギリスの歴史と世界の物語に深く刻まれるだろう」として追悼しました。
ドイツ ショルツ首相「模範で心の励み」
ドイツのショルツ首相は、8日、ツイッターに「ドイツ国民をはじめ、多くの人にとって模範で心の励みだった。第2次世界大戦後のドイツとイギリスの和解への貢献は忘れられることはない。彼女の死が悔やまれる」と投稿し、その功績をたたえ、女王の死を悼みました。
ロシア プーチン大統領「イギリスの王室と国民にお悔やみ」
ロシア大統領府は8日、プーチン大統領の哀悼のメッセージを発表しました。
このなかでプーチン大統領は「女王陛下の名前は、イギリスの現代史の最も重要な出来事と切っても切れない関係にある。何十年にもわたり、人々から愛と尊敬を集め、世界の舞台でも尊敬されてきた。取り返しのつかない大きな損失に直面するなか、勇気と不屈の精神を発揮されることを祈っている。イギリスの王室と国民にお悔やみを伝えたい」としています。
ブラジル ボルソナロ大統領「大きな衝撃と悲しみ」
ブラジルのボルソナロ大統領は8日、みずからのツイッターで「大きな衝撃と悲しみをもって受け止めている。彼女のリーダーシップと謙虚な姿勢、そして国を愛する心は、私たちブラジル人、そして世界の人々の心に永遠に刻まれるだろう」と述べました。
その上で国として3日間、喪に服すことを宣言しました。
アメリカ 歴代大統領が相次いで哀悼の意
アメリカでは、歴代の大統領も相次いで哀悼の意を表しています。
このうちトランプ前大統領はソーシャルメディアへの投稿で「エリザベス女王による卓越した統治は、イギリスに、平和と発展というすばらしい遺産を残した。彼女のリーダーシップと外交はアメリカや世界の国々との同盟関係を、より深いものにした」と功績をたたえました。
またオバマ元大統領は声明で「エリザベス女王は何十年もかけて、自身ならではの女王としての役割を確立した。寛大さと気品、そして絶え間ない勤勉さが表れた統治だった。彼女の世代における、女性への偏見に挑戦するものでもあった」とたたえ、その死を悼みました。