自民党総裁選(3)

 自民党の派閥は領袖を総裁に押し上げるために総裁選を結束して戦い、所属議員は領袖に忠誠を誓う代わりに「ポストとカネ」の配分を受けてきた。だが、1990年代の一連の政治改革で、政党交付金制度や、中選挙区制だった衆院選小選挙区比例代表並立制が導入されたことで、資金やポストの差配は党執行部に移り、所属議員は派閥からの恩恵が薄れる結果となった。今回は、直後に衆院選を控えており、選挙基盤の弱い中堅・若手を中心に派閥の意向よりも、党員や有権者の声を優先する動きが強まっている。党幹部は「派閥議員を強引に締め付けると、造反が続出し、派閥の崩壊につながりかねない」こういった状況から岸田派以外は自主投票の動きになっているが但し書きがつきそうなのは決選投票になった場合はそれなりの締め付けが出てくるであろう。麻生氏は「総裁選という名を借りた権力闘争であることはしっかり腹に収めてもらいたい。負けたら冷や飯を食う」と語った。9/17に所見発表会を経て立候補が出そろって9/18には14:00~記者クラブでの討論会が行われる。キャッチフレーズは河野氏「ぬくもりのある社会つくる」、岸田氏「丁寧で寛容な政治を進める」、高市氏「美しく、強く、成長する国に」、野田氏「人口減少、積極的に取り組む」。「菅首相が代われば、内閣支持率が上昇し、間近に迫る衆院選に有利になる」。総裁選に当たって心配なのは多くの自民党の国会議員からうかがえる一種の安堵感と期待だ。これは自民党の緩みにつながり、次の政権の政策運営にも悪影響を及ぼす。日本の国内外を巡る様々な課題の所在を忘れ、総裁が交代すれば党は生き残ることができるという「首相使い捨て」の安易な発想に行きつくからだ。国会議員と党員らによる自民党総裁選は野党やほとんどの国民は参加できずに実施されるため、コップの中の争いになりがちだ。コロナの感染「第6波」への懸念がある現在にあってコップの中の争いに終始する時間の猶予はない。米国と中国の対立のはざまで日本の外交・安全保障や通商の戦略をどう描くかも急務だ。日本の危機を直視し、その針路をどう見定めるか。これからの論戦で4人の候補の危機意識とそれにどう臨むかの具体策を見極めたい。